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先人から伝わる理念を継承し、多様性が活きる場をつくる。
井村屋グループ株式会社
執行役員 HR室長 兼 海外HR担当 平田 裕一
愛知県名古屋市出身。1996年に井村屋製菓株式会社(現:井村屋グループ株式会社)入社。菓子・食品・スイーツ副工場長、井村屋(北京)食品有限公司 生産開発部長、IMURAYA USA, INC. Vice-Presidentなどを経て、2024年4月より現職。イムラ株式会社取締役を兼務。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
社内で12回のジョブチェンジ、一番の軸は海外での経験。
大学は工学部の物理化学専攻でレーザー光化学の研究室に在籍しましたが、食品業界に興味を持ちはじめ、縁があって井村屋に入社しました。異色の経緯かもしれません。
入社してすぐに配属されたのは東京のアメリカンパイ専門店アンナミラーズ。名古屋では肉まん、あんまん、あずきバーの営業を担当し、三重の本社ではアイスクリームの商品開発や菓子・スイーツの製造部門責任者を経験しました。
その後、中国法人に生産開発部長として赴任し、米国法人ではバイスプレジデント(副社長)を務めました。2023年にグループ本社に戻り、翌年HR室長に任じられて現在は入社29年目ですが、社内で12回のジョブチェンジをしてきたことになります。
これも異色の経歴で私の特色になっていますが、いろいろな職種の魅力や難しさを実体験できました。中でも、海外に行って価値観がまったく違う方たちと仕事をした経験は大きな糧になっています。
本当にいろいろな個性の方がいて、国柄があり、仕事に対する考え方がみな、違います。中国では作業方法を見直して生産性が上がった反面、残業が激減して工場従業員の収入が減ったことで集団抗議を経験しました。
また、同じ大陸でも移民の国であるアメリカでは、日本人の常識がスタンダードではないことを感じました。自分の人生でもヒューマンリソースの仕事上でも、海外での経験が自分の考えの最も重要な軸になっています。
理念の言葉をどう継承し、企業ガバナンスにつなげてきたか。

基本的には井村二郎(旧:株式会社井村屋 初代社長、故人)の言葉が今も残っていて、それを現代に合う形で浸透させたのが浅田剛夫(元井村屋グループCEO)です。
例えば井村二郎の言葉である「ヤミ商売は絶対にしない。経理をオープンにする」ですが、ヤミに手を染めない誠実さ、不正をしないこと、オープンであることは、すなわちコンプライアンスでありガバナンスにつながる考え方です。
先人の教えが言葉を変えて我々に継承されてきた、それが「不易」です。そして、時代の変化に合わせるのが「流行」。自然環境の変化やグローバル化、お客さまの求めに合わせていくことも当グループの考え方の一つになっています。
また、「特色経営」は、他社の真似をしないオリジナリティで、経営の軸にあります。「不易流行」とともに基本理念の二本柱となっています。
新入社員研修では、まずこの二本柱を社員に伝えています。キャリア採用の方にも私たちの軸となる考えをしっかりと話し、それらを前提に制定された井村屋グループクレドの説明もします。
リーダー層には、システム思考をベースにした課題の本質を深く理解する研修プログラムも提供しています。もう一つ上の層になると人間力を磨き、自己表現力や伝達力の向上を図る目的でスピーチのトレーニングも積極的に実施しています。
これらはほとんどが浅田の時代から実施しているもので、私もその受講生のひとり。今後は私たちで考えていかなければならないので重責を感じます。
海外から本社を見ていた私としては、もっと外に出て気づきを生むやり方もあると感じており、外部で学んだことを活かし、また時代にあわせて変えていくことが必要だと思います。
グループの特色であるシナジーを生み出すのに大事なものは多様性。
当グループには冷凍、チルド、常温の3温度帯の商品があり、その中に菓子、食品、冷菓、点心デリ、デイリーチルドなどの商品があります。
事業としては流通事業の他、フードサービス事業やBtoB事業にも展開していますが、それらを組み合わせてシナジーを生み出しているのは当社の特色といえるでしょう。
最近では、そのシナジーとお客さまのニーズやウォンツを最適化した商品・サービスの提供を強化しています。一例は冷凍菓子です。
昔は日持ちがしない和菓子商品ばかりでしたが、現在は冷凍の技術と流通網の活用により、ロスなくいつでも食べられる簡便性のある商品、食べたいときに食べたい分だけ解凍して食べられる冷凍和菓子を開発・提供しています。食の多様化に対する最適化といえます。
当社にとっては冷凍の技術、冷凍商品の流通は大きな強みです。ただ、温度帯、技術、商品の違いによる組み合わせの掛け算は無限にあり、まだまだ気づいていないことがたくさんあるはずです。
シナジーを生むために大事なものは、多様性だと思います。当グループは2015年度に人事制度を大きく変え、一般職と総合職の垣根をなくして一本化しました。そして、女性が活躍できるための人財育成にも早くから取り組んできました。
女性の管理職比率は15.6%(2024年度末時点)でまだ高い水準とは言えませんが、次の世代が管理職に上がると30%程度まで上昇する見通しです。
性別・年齢・ライフステージを越えて活躍できる職場に。

「女性の活躍」と言うと女性だけにフォーカスされてしまいますが、当グループは「性別を問わず、一人ひとりが活躍できる環境づくり」に注力してきました。
制度整備だけではなく、浅田が前面に立って女性と対話をし、悩みや不安を聞き取り、成長に向けた助言をする場も設けました。
こうした取り組みは中島伸子(元井村屋グループCEO)へと引き継がれ、新たな取り組みにもつながっています。
振り返ってみると、私たちの世代は女性が発言するハードルが高かったと思います。
そうした中で早くから土壌づくりに取り組んできた結果、今では女性がいろいろなアイデアを出したり、プロジェクトに参加したりするのが当たり前になりました。そこは大きく変わった点だと感じています。
今後は年齢の高い方も若い方も、どの年代の方でもイキイキとやりがいを持って活躍できる会社を目指します。
年齢だけでなく、子育てや介護といったライフステージも含め、多様な状況にあるすべての方が活躍できるようサポートをする制度を今期新しく作っています。
外国人留学生の新卒採用は以前から行っていますが、ここ数年は特に積極的に取り組んでいます。
これまでは中国籍の方が多かったのですが、今年は初めてネパール出身の方が一名入社しました。外国籍の人財も活躍できる多様性が大事だと思います。
人的資本経営強化の取り組み、北海道十勝小豆圃場での若手研修を再スタート。
私たちは「Kの字経営」を掲げています。上向き線のトップラインは商品開発や販売など、下向き線のコストイノベーションは生産性などです。Kの字の縦軸線は、やはり「人財」です。
「商品こそ我が命、人こそ我が宝」と井村二郎は言っていました。DX推進もグローバル化も人が育ってこそだと私は思いますし、会社としても人的資本経営の強化を常に取り組んでおり、重要な指針としています。
人事において最も大事なのは、採用して配属して終わりではなく、採用した後にしっかりとした学びの機会を作り、生み出した成果には公平な評価をすることです。
今年は、コロナ禍で中断していた北海道十勝小豆圃場での若手研修を再スタートしました。職種は関係なく、入社3年目以降の従業員を対象として参加者を公募。応募は農業と当社の関わりをテーマとしたレポート提出が条件となり、その内容から評価選考されます。
レポートは全部、私を含めたHR室のスタッフが読んで点数を付けます。数を絞って上層部にも見てもらい、その中でしっかりと順位を付けます。
公平に評価しないといけないので時間はかかりますが、参加をしたのは自ら応募した意欲のある従業員たちです。選ばれなかった応募者にも丁寧にフィードバックすることも私たちの大切な仕事です。
座学後は小豆農場で草刈りをして、農家の皆さんとお話しをする機会を設ける他、北海道の砂糖の製造工場なども見学させてもらい、研修後にはレポートを書いてもらいます。
現地で体感することにより、その後の業務において、お客さまの納得性を高める説明ができるようになることを期待しています。
自分の特色を生かしながらバランスを取れる人財になって。

当グループで働く方に求める資質について、繰り返しになりますが人間力が重要です。不正をしない誠実さは、もちろん絶対に欠かせないものです。
リーダーシップも求められます。公正で誠実で、熱い思いでイノベーションに向かって突き進んでいく人は、どんな国でも活躍できます。
最初に日本基準はスタンダードではないと言いましたが、良いリーダーというのは万国共通です。そしてグローバルにもローカルにも活躍できること、バランス良くやれることも大事です。
私たちがパーパスとしてきた「おいしい!の笑顔をつくる」の理念も、今は世界に向けて発信しています。
海外で日常的に皆さんの笑顔を作る。そしてローカル、やはりお膝元の日本の方にも喜んでいただけるものを作らないといけません。
数年前、会社から私たち所属長にヤジロベエが配られました。自分の机の上にも置いてあるのですが、要はバランスが大事ということの象徴ですね。
会社は利益ばかりに走ってはいけない。しかし社会貢献も、利益がなければできません。個人の中でも厳しさと優しさのバランスが取れていないといけない。
とはいえ、最初からバランスが良くなくても大丈夫です。私が大事にしていることは、共に学んで、共に成長して、何より共に笑顔になることです。
ぜひ当社に来て、自分の特色を生かしながらバランスを取れる人財に成長してほしいですね。